「開発者に仕様が伝わらない」「手戻りが多くてプロジェクトが炎上しがち」といった課題を抱える、要件定義担当のシステムエンジニアは少なくありません。その根本的な原因を解決し、自身の市場価値を飛躍的に高めるために最も重要なスキルこそが「システム設計」の知識です。本記事を読めば、要件定義の質を格段に向上させるために必要な設計スキルが何かが分かり、コミュニケーションを円滑にする「基本設計」、手戻りを防ぐ「詳細設計」、そして実現可能性を判断するための「インフラ」や「データベース設計」の全体像を掴むことができます。さらに、明日から実践できる具体的な学習アクションプランまで網羅しているため、あなたのキャリアアップを力強く後押しします。
「仕様が伝わらない」を解決 要件定義担当システムエンジニアのための設計入門

「クライアントの要望をまとめたはずなのに、開発担当者にうまく伝わらない」「仕様書通りに作ったはずなのに、なぜか手戻りが多い」。要件定義を主担当とするシステムエンジニア(SE)の多くが、このような悩みを抱えています。クライアントと開発チームの「橋渡し役」であるはずが、いつの間にかコミュニケーションのボトルネックになってしまうのは、非常につらい状況です。
その問題の根源は、多くの場合、システム設計に関する知識不足にあります。要件定義は、単に顧客の要望を聞き取ってドキュメントにまとめるだけの仕事ではありません。その要望が技術的にどう実現されるのか、どのような制約があるのかを理解した上で、実現可能な「仕様」に落とし込む重要な工程です。本章では、多くの要件定義担当SEが直面する具体的な課題を掘り下げ、なぜ設計スキルが不可欠なのかを明らかにします。
開発者との会話が噛み合わない
要件定義担当SEと開発者の間では、目的や視点が異なるため、コミュニケーションギャップが生まれがちです。あなたは「顧客のビジネス価値」を最大化することを目指しますが、開発者は「システムの安定性や拡張性」を重視します。この視点の違いが、会話のすれ違いを生むのです。設計知識が不足していると、開発者が発する専門用語の意図を正確に汲み取れず、会話が噛み合わなくなってしまいます。
例えば、以下のような会話に心当たりはありませんか?
| 役割 | 発言 | 開発者の思考(本音) |
|---|---|---|
| 要件定義担当SE | 「ここの検索機能、もっと柔軟に、どんなキーワードでも曖昧にヒットするようにできませんか?」 | (”曖昧に”の定義が不明確すぎる。全文検索エンジンを入れるのか?DBのインデックス設計から見直す必要があり、工数もパフォーマンスへの影響も甚大だ…) |
| 開発者 | 「その要件だと、DBの正規化を崩すことになり、パフォーマンスにも影響が出る可能性があります。APIのレスポンスも保証できません。」 | (ビジネス的なインパクトと技術的負債を天秤にかけてほしい。安易に「できる」とは言えない…) |
| 要件定義担当SE | 「(正規化?APIレスポンス…?)…そこを何とかするのがプロでしょう。顧客は強く望んでいます。」 | (技術的な背景を理解してもらえていない。これでは建設的な議論にならない…) |
このような状況では、開発者は「要件を理解していない」と感じ、あなたは「技術的な言い訳ばかりで協力的でない」と感じてしまうかもしれません。設計の基礎知識があれば、開発者の懸念(パフォーマンス、保守性、技術的負債など)を理解し、「では、この代替案ではどうか?」といった建設的な対話が可能になります。
手戻りが多くてプロジェクトが炎上しがち
コミュニケーションの齟齬は、プロジェクトの遅延や品質低下に直結する「手戻り」を頻発させます。要件定義の段階で技術的な実現性や影響範囲の考慮が漏れていると、詳細設計や実装のフェーズで必ず問題が噴出します。後工程で発覚する問題ほど、修正にかかるコストは指数関数的に増大し、プロジェクトは瞬く間に炎上してしまうのです。
手戻りを引き起こす典型的な原因には、以下のようなものが挙げられます。
| 要件定義書の曖昧な記述例 | 後工程で発覚する問題 | 設計知識があれば防げたこと |
|---|---|---|
| 「ユーザー情報は安全に管理すること」 | 個人情報保護法の要件を満たしていない。パスワードのハッシュ化方式が古い。DBの暗号化が考慮されていない。 | セキュリティ設計の観点から、具体的な暗号化方式やアクセス制御の要件を定義できた。 |
| 「大量のアクセスにも耐えられるようにすること」 | 負荷試験でサーバーがダウン。レスポンスが極端に悪化し、実用に耐えないことが判明。 | 非機能要件として、具体的な目標値(例:秒間100リクエスト、レスポンスタイム200ms以内)を定義し、インフラ構成やアーキテクチャの検討を促せた。 |
| 「CSVファイルでデータ連携を行う」 | 文字コードの違いでデータが文字化けする。データ量が多く、バッチ処理が想定時間内に終わらない。 | データ連携方式の設計知識に基づき、文字コード、ファイル形式、エラーハンドリング、処理性能などの詳細な仕様を詰められた。 |
これらの問題は、要件定義担当SEに詳細設計レベルの深い知識がなくとも、「どのような点を詰めるべきか」という設計的な観点を持つだけで、その多くを防ぐことができます。手戻りの削減は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。
技術的な制約がわからず無理な要件を定義してしまう
クライアントの要望をそのまま受け入れ、技術的な実現可能性を考慮せずに要件定義を進めてしまうことは、プロジェクトを失敗に導く最も危険な行為です。システムは魔法の箱ではありません。性能、コスト、開発期間、セキュリティなど、様々なトレードオフの上に成り立っています。
例えば、クライアントから「全ユーザーの位置情報をリアルタイムで地図上に表示したい」という要望があったとします。一見すると魅力的な機能ですが、設計の視点がないと、その裏に潜む技術的な課題を見過ごしてしまいます。
- パフォーマンス:数万人のユーザーが同時にアクセスした場合、サーバーやネットワークにかかる負荷は?データベースの応答速度は保てるか?
- コスト:高スペックなサーバーや、従量課金制の地図API、クラウドサービスの利用料は予算内に収まるか?
- 実現性:スマートフォンのバッテリー消費は激しくならないか?そもそも、ユーザーから位置情報の常時取得の同意は得られるのか?
設計知識を持つSEは、こうした技術的制約を瞬時に想定し、クライアントに対して「リアルタイムではなく5分間隔の更新にしてはどうか」「表示するユーザーを特定の範囲に絞ってはどうか」といった、ビジネス価値を損なわずに実現可能性を高める代替案を提示できます。要件定義担当SEは、クライアントの夢を形にする役割であると同時に、技術的な制約を翻訳し、プロジェクトを成功に導く「現実的な案内人」でなければならないのです。
システムエンジニアの課題を解決する設計スキルとは
要件定義を担当するシステムエンジニアが直面する「開発者との認識齟齬」「頻発する手戻り」「技術的制約の軽視」といった課題は、システム設計に関する知識を深めることで解決に導くことができます。設計スキルは、顧客の要望という抽象的な概念と、開発者が実装する具体的なプログラムとの間にある溝を埋める「翻訳機」の役割を果たします。このスキルを身につけることで、プロジェクト全体を見通す力が養われ、上流工程を担うエンジニアとしての市場価値を飛躍的に高めることが可能です。ここでは、課題解決に直結する3つの重要な設計スキルについて解説します。
コミュニケーションを円滑にする基本設計の知識
基本設計(外部設計)は、顧客やユーザーから見えるシステムの振る舞いを定義する工程です。要件定義で固めた要望を、具体的な機能や画面、操作方法に落とし込んでいきます。要件定義担当者がこの基本設計の知識を持つことで、開発チームとのコミュニケーションは劇的に円滑になります。なぜなら、顧客の言葉を開発者が理解できる「システムの仕様」という共通言語で伝えられるようになるからです。
例えば、「もっと使いやすくしてほしい」という曖昧な要望も、画面遷移図やワイヤーフレームを用いて「ここのボタン配置を変更し、入力項目を3つ減らすことで、ユーザーの操作ステップを削減します」と具体的に提案できます。これにより、開発者は意図を正確に汲み取り、認識のズレなく作業を進めることができます。
| 成果物 | 目的 |
|---|---|
| 機能一覧 | システムが提供する全ての機能を網羅的にリストアップし、開発範囲を明確にする。 |
| 画面設計書(画面レイアウト、画面遷移図) | ユーザーが直接操作する画面の見た目や配置、画面間の移動フローを定義し、UI/UXを具体化する。 |
| 帳票設計書 | システムが出力する請求書や報告書などのレイアウト、記載項目を定義する。 |
| ユースケース図(UML) | ユーザー(アクター)とシステム間のインタラクションを可視化し、システムの振る舞いを明確にする。 |
手戻りを防ぐための詳細設計への理解
詳細設計(内部設計)は、基本設計で定められた機能をどのように実現するか、システムの内部構造を具体的に定義する工程です。プログラマーが直接コーディングできるよう、処理の流れやデータの構造などを詳細に記述します。要件定義担当者が詳細設計を自ら作成する必要はありませんが、その内容を「理解」できることは、手戻りを防ぎ、プロジェクトを成功に導く上で極めて重要です。
詳細設計への理解があれば、要件定義の段階で実装の難易度や潜在的なリスクを予測できます。「この機能は特定のデータベース構造と相性が悪く、パフォーマンスに影響が出る可能性がある」といった技術的な課題を早期に発見し、代替案を検討することが可能になります。開発者からの技術的なフィードバックの意図も正確に理解できるため、建設的な議論を通じて、より現実的で質の高い仕様を策定できるのです。
| 比較項目 | 基本設計(外部設計) | 詳細設計(内部設計) |
|---|---|---|
| 視点 | ユーザーからシステムがどう見えるか(What) | システム内部でどう実現するか(How) |
| 目的 | システムの振る舞いや機能を定義する | プログラミングが可能になるレベルまで処理を具体化する |
| 主な成果物 | 画面設計書、帳票設計書、機能一覧 | クラス図、シーケンス図、ER図、API仕様書 |
| 主な担当者 | システムエンジニア(上流) | システムエンジニア(下流)、プログラマー |
実現可能性を判断するインフラとアーキテクチャの視点
システムはアプリケーションだけで成り立っているわけではありません。その土台となるサーバーやネットワークといったインフラ、そしてソフトウェア全体の構造を定めるアーキテクチャが、システムの性能や安定性を大きく左右します。特に、応答速度、24時間365日の稼働、セキュリティといった非機能要件は、インフラとアーキテクチャの設計に深く依存します。
要件定義担当者がこの視点を持つことで、顧客のビジネス要件と技術的な実現可能性を高いレベルで結びつけられるようになります。「将来的にアクセス数が100倍になる可能性がある」という要望に対し、クラウド(AWS, Azure, GCPなど)のオートスケーリング機能を利用した拡張性の高いアーキテクチャを提案したり、「絶対に止まってはならない」という要件に対し、サーバーを冗長化する構成を検討したりと、より付加価値の高い提案が可能になります。机上の空論で終わらない、地に足のついた要件定義を行うために、この視点は不可欠です。
| 非機能要件 | 主な検討事項 |
|---|---|
| 性能・可用性 | サーバーのスペック、負荷分散(ロードバランシング)、冗長化構成、データベースのパフォーマンスチューニング |
| 拡張性・柔軟性 | クラウドサービスの活用(オートスケーリング)、コンテナ技術(Docker, Kubernetes)、マイクロサービスアーキテクチャの採用 |
| セキュリティ | ファイアウォール、WAF(Web Application Firewall)の導入、ネットワークセグメントの分割、暗号化通信(SSL/TLS) |
| 運用・保守性 | 監視ツールの導入、ログ設計、バックアップ・リストア計画、デプロイの自動化(CI/CD) |
要件定義担当者が知るべきシステム設計の全体像

要件定義で決定した「何を作るか(What)」を、具体的な「どうやって作るか(How)」に落とし込むのが設計工程です。要件定義担当のシステムエンジニアが設計の全体像を理解することで、後工程の開発者へ意図を正確に伝え、手戻りの少ない円滑なプロジェクト進行が可能になります。システム設計は、大きく分けて「アプリケーション設計」「インフラ設計」「データベース設計」の3つの領域で構成されています。
機能要件を形にするアプリケーション設計
アプリケーション設計は、ユーザーが直接操作する画面や、業務ロジックといったシステムの「振る舞い」を具体化する工程です。要件定義で定められた機能要件を、どのような画面や処理で実現するかを定義します。この設計の品質が、ユーザーの使いやすさ(ユーザビリティ)や業務効率に直結するため、非常に重要です。主に、ユーザーの目に触れる部分を定義する「外部設計(基本設計)」と、その内部的な処理方式を定義する「内部設計(詳細設計)」に分かれます。
画面設計と帳票設計
画面設計と帳票設計は、システムのユーザーインターフェース(UI)を定義する中心的な作業です。要件定義でヒアリングした顧客の要望を、目に見える形に落とし込みます。使いやすい画面はユーザーの満足度を高め、業務の生産性を向上させます。要件定義担当者がこの設計の勘所を掴んでおくことで、顧客との認識齟齬を防ぎ、より精度の高い要件定義が可能になります。
| 設計対象 | 主な設計項目 | 要件定義担当者が意識すべきポイント |
|---|---|---|
| 画面設計 | 画面レイアウト、表示項目、入力項目(バリデーションルール)、ボタンやリンクの配置、画面遷移図、ワイヤーフレーム作成 | ユーザーが直感的に操作できるか(UX)、業務フローに沿った自然な画面遷移になっているか、入力ミスを防ぐ工夫はされているか |
| 帳票設計 | 帳票レイアウト(ヘッダー、明細、フッター)、出力項目、計算式、出力形式(PDF, Excelなど)、出力タイミング | 法改正や社内規定の変更に対応できるか、既存の帳票フォーマットとの整合性は取れているか、印刷時のレイアウト崩れは考慮されているか |
バッチ処理設計
バッチ処理とは、ユーザーの操作とは関係なく、決められた時間に自動で実行される一連の処理のことです。例えば、夜間のデータ集計や、他システムとのデータ連携などが該当します。画面のように直接目に見える部分ではありませんが、システムの安定稼働やデータ整合性を支える重要な機能です。要件定義の段階で処理対象のデータ量や求められる処理時間を正確に把握し、設計に反映させることがプロジェクトの成否を分けます。
バッチ処理設計では、主に以下のような点を考慮します。
- 実行タイミング:日次、月次、リアルタイムなど、いつ処理を起動させるか。
- 処理性能:想定されるデータ量に対して、制限時間内に処理が完了するか。
- 異常系処理:処理中にエラーが発生した場合の検知、通知、リカバリー(再実行)方法をどうするか。
- データ連携方式:ファイル転送(FTP/SFTP)やAPI連携など、他システムとどのようにデータをやり取りするか。
非機能要件を担保するインフラ設計
インフラ設計は、アプリケーションを動かすための土台となるサーバー、ネットワーク、OS、ミドルウェアなどのIT基盤を設計する工程です。要件定義で定めた性能、可用性、セキュリティといった非機能要件を技術的に実現する役割を担います。要件定義担当者がインフラの知識を持つことで、非機能要件の実現性を判断し、コストとパフォーマンスのバランスが取れた提案が可能になります。
サーバー構成とネットワーク設計
サーバー構成では、システムに必要なサーバーの種類(Web、AP、DBなど)とそれぞれのスペック、台数を決定します。システムの信頼性を高めるために、サーバーを複数台用意して冗長化したり、負荷分散装置(ロードバランサー)を導入して処理を分散させたりする構成を検討します。
ネットワーク設計では、サーバー間の通信経路や、インターネットなどの外部環境との接続方法を定義します。セキュリティを確保するために、ファイアウォールやWAF(Web Application Firewall)を設置し、不正なアクセスからシステムを保護する構成を検討することも重要です。これらの設計は、システムの安定稼働とセキュリティレベルに直接影響します。
クラウド(AWS, GCP)サービスの選定
現代のシステム開発では、自社で物理的なサーバーを持たずに、AWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)、Microsoft Azureといったクラウドサービスを利用することが主流です。クラウドを利用することで、必要な時に必要な分だけリソースを確保でき、初期投資を抑えながら高い拡張性を持つシステムを構築できます。
インフラ設計では、システムの要件に応じて、数多くあるクラウドサービスの中から最適なものを組み合わせて選定します。
| 要件の例 | 利用するクラウドサービスの例(AWSの場合) | 選定理由 |
|---|---|---|
| アクセス数の増減が激しいWebサイト | Amazon EC2 + Auto Scaling + ELB | アクセス負荷に応じてサーバー台数を自動で増減させ、安定したレスポンス性能とコストの最適化を両立できる。 |
| サーバーの管理・運用コストを削減したい | AWS Lambda, Amazon ECS (Fargate) | サーバーの存在を意識せずにアプリケーションを実行できる(サーバーレス)。OSのパッチ適用などの運用負荷を大幅に軽減できる。 |
| 大規模なデータを安全に保管したい | Amazon S3, Amazon Glacier | 非常に高い耐久性を持つストレージサービス。データの重要度やアクセス頻度に応じて、コストの安いサービスを選択できる。 |
要件定義担当者は、どのようなクラウドサービスが存在し、それぞれがどのような特性を持つかを大まかに理解しておくだけでも、顧客への提案の幅が大きく広がります。
データの流れを整理するデータベース設計
データベース設計は、システムで扱う顧客情報や商品情報、売上データなどを、どのように整理して格納するかを定義する工程です。ここで設計されたデータの構造は、アプリケーションの作りやすさやシステムのパフォーマンスに極めて大きな影響を与えます。一度構築したデータベースの構造を後から変更するのは非常に困難なため、設計工程の中でも特に重要な役割を担います。
データベース設計は、主に「論理設計」と「物理設計」の2段階に分かれます。
- 論理設計:システムで扱うデータを項目ごとに洗い出し、データの重複や矛盾が生じないように整理・グループ化します。この工程では、ER図(Entity-Relationship Diagram)を用いて、データの関連性を視覚的に表現することが一般的です。
- 物理設計:論理設計で定義したデータ構造を、実際に使用するデータベース製品(Oracle, MySQL, PostgreSQLなど)の仕様に合わせて、テーブルやインデックスの定義に落とし込みます。パフォーマンスを考慮し、最適なデータ型やインデックス設定を検討します。
要件定義担当者としては、特に論理設計の考え方を理解することが不可欠です。顧客の業務内容を深く理解し、将来的な仕様変更も見据えて、どのようなデータが必要で、それらがどう関連しているかを正確に把握する能力が、質の高いデータベース設計の土台となります。
明日から始められる設計スキル習得アクションプラン
システム設計の重要性を理解しても、何から手をつければ良いか分からない、という方も多いでしょう。ここでは、要件定義を担当するシステムエンジニアが、明日からすぐに実践できる具体的なスキル習得アクションプランを3つご紹介します。理論学習だけでなく、実践を通じて知識を定着させることが市場価値を高める鍵となります。
先輩エンジニアの設計書レビューに参加する
最も効果的で実践的な学習方法の一つが、経験豊富な先輩エンジニアが作成した設計書を読んだり、そのレビュー会議に参加したりすることです。実務で作成された設計書は、書籍や研修で学ぶ知識がどのようにプロジェクトに落とし込まれているかを知るための最高の教材となります。
まずはオブザーバーとして参加を申し出る
いきなりレビュアーとして参加するのはハードルが高いかもしれません。まずは「勉強のために」と断りを入れ、オブザーバー(見学者)としてレビュー会議に参加させてもらいましょう。会議では、どのような観点で指摘が行われるのか、設計の意図をどのように説明するのか、技術選定の背景には何があるのかなど、現場のリアルなやり取りから多くを学べます。
レビュー参加の心構えとポイント
- 事前に設計書を読み込む: 会議に参加する前に必ず設計書を読み込み、自分なりに理解できない点や疑問点を洗い出しておきましょう。
- 積極的に質問する: 会議の流れを妨げない範囲で、疑問に思った用語や設計思想について質問しましょう。「なぜこの方式を採用したのですか?」といった質問は、設計の背景にあるトレードオフの考え方を学ぶ絶好の機会です。
- 指摘事項をメモする: 誰がどのような指摘をしたのか、そしてそれに対して設計者がどう回答したのかを詳細にメモします。その指摘事項こそが、品質の高い設計を行うためのチェックリストになります。
- 自分の言葉で要約する: レビュー後、学んだことを自分の言葉でドキュメントにまとめてみましょう。人に説明できるレベルまで理解を深めることが目的です。
この経験を積むことで、自分が要件定義を行う際に、後工程である設計・開発フェーズでどのような情報が必要とされるのかを具体的にイメージできるようになります。
社内勉強会や外部セミナーを活用する
自社内や社外のコミュニティが開催する勉強会・セミナーは、体系的な知識を効率的にインプットし、新たな視点を得るための貴重な機会です。特に、他社のエンジニアがどのような課題を持ち、どう設計で解決しているのかを知ることは、自身の視野を広げる上で非常に有益です。
社内勉強会で知見を深める
まずは、社内で開催されている勉強会を探してみましょう。過去の勉強会の資料が共有サーバーなどに保管されていることもあります。もし設計に関するテーマの勉強会がなければ、自ら企画してみるのも一つの手です。「要件定義担当者のためのDB設計入門」といったテーマで、データベースに詳しいエンジニアに講師を依頼すれば、部署を超えた知識の共有が促進されます。
外部セミナーで最新トレンドをキャッチアップする
ConnpassやTECH PLAYといったIT勉強会支援プラットフォームを活用すれば、設計に関するセミナーやイベントを簡単に見つけることができます。クラウドベンダー(AWS、GCP、Azureなど)が主催する公式のカンファレンスやウェビナーも、最新のアーキテクチャや設計パターンを学ぶのに最適です。初めはオンライン開催のものから気軽に参加してみると良いでしょう。
Udemyなどの動画教材で学ぶ
自分のペースで、時間や場所を選ばずに学習したい方には、オンライン動画教材がおすすめです。特にUdemyなどのプラットフォームでは、システム設計に関する質の高い講座が数多く提供されています。視覚的に分かりやすく、ハンズオン形式で実際に手を動かしながら学べる講座も多いため、知識の定着率が高いのが特徴です。
自分に合った講座の選び方
数ある講座の中から最適なものを選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、講座の評価(レビュー)や受講者数を確認しましょう。多くの高評価を得ている講座は、内容が分かりやすく満足度が高い傾向にあります。次に、講座のカリキュラムを確認し、「データベース設計」「AWSのインフラ設計」「UMLモデリング」など、自分が今最も学びたい内容が含まれているかをチェックします。初心者向け、中級者向けといったレベル設定も確認し、現在の自分のスキルに合ったものを選びましょう。
代表的な学習プラットフォームと特徴
要件定義担当者が設計スキルを学ぶ上でおすすめのプラットフォームをいくつかご紹介します。
| プラットフォーム名 | 特徴 | おすすめの学習内容 |
|---|---|---|
| Udemy | 世界最大級のオンライン学習プラットフォーム。講座数が圧倒的に多く、頻繁にセールが開催される。買い切り型のため一度購入すれば何度でも視聴可能。 | AWSやGCPのアーキテクチャ設計、データベース設計、UMLを用いたオブジェクト指向設計など、特定の技術領域を深く学ぶ講座。 |
| Schoo | 日本のビジネスパーソン向けの生放送授業が中心。録画授業も見放題。月額制で幅広いジャンルの講座を受講できる。 | システム設計の全体像や、非エンジニアにも分かるITの基礎知識など、ビジネス寄りの視点を含んだ講座。 |
| ドットインストール | 3分動画でプログラミングを学べるサービス。短い時間でサクッと学べるため、隙間時間の活用に最適。 | Webサーバーの仕組み、ネットワークの基礎、SQLの基本など、設計の前提となる基礎技術の習得。 |
これらのアクションプランを組み合わせ、継続的に学習することが、開発者から信頼され、プロジェクトを成功に導く要件定義担当システムエンジニアへの近道です。
まとめ
本記事では、要件定義を担当するシステムエンジニアが、なぜ設計スキルを学ぶべきなのか、そして具体的な学習方法について解説しました。
設計の知識は、開発者とのコミュニケーションを円滑にし、手戻りを防ぎ、技術的な裏付けのある実現可能な要件を定義するために不可欠です。これにより、プロジェクトを炎上させずに成功へ導くことができます。
明日から始められるアクションとして、まずは先輩の設計書レビューに参加したり、Udemyなどのオンライン教材で興味のある分野から学んでみましょう。小さな一歩が、あなたのエンジニアとしての市場価値を大きく高めることに繋がります。
要件定義と設計、両方のスキルを兼ね備えることで、プロジェクト全体を俯瞰できる貴重な人材となり、より上流の工程で活躍できるキャリアパスが開けるでしょう。

